あの日食べたバターライスの不味さを僕達はまだ知らない。(実写版)

We still don't know the distastefulness of the butter rice we ate that day. (live-action version)

永井路子『炎環』 (文春文庫)

『炎環』は、頼朝挙兵から北条義時が実権を握るまでを描いた歴史小説で、直木賞受賞作。それぞれ別々の人物を主人公にした全四編の連作短編集。それぞれの主人公は以下の通り。 全成(頼朝の異母弟で、義経の同母兄) 梶原景時 保子(北条政子の妹で全成の妻…

バルザック『ツールの司祭・赤い宿屋』(岩波文庫)

『赤い宿屋』は『ゴリオ爺さん』でも話題になるタイユフェル(タイユフェール)の話。『ツールの司祭』はビロトーという司祭が同僚のトルーベールによって安穏とした生活を奪われるという話。自分はダメ人間に肩入れしちゃうタチなので、ビロトーに感情移入…

(旧)漢字が読めない

バルザック『ツールの司祭,赤い宿屋』(岩波文庫) 本屋でちょっと立ち読みしたら意外と読めたので調子に乗って買っちゃったけど、やっぱり読めない。初版は1945年。こういうのを読むと改めて昔は読書はインテリだけのためのものだったんだなと思わされる。鞴…

芥川賞受賞作をいろいろ読んでみた

去年の暮れから今年にかけて、芥川賞受賞作をいろいろ読んでみた。去年は安岡章太郎とか吉行淳之介あたりを読んだ。今年に入ってから比較的新し目(と言っても『光抱く友よ』は昭和58年受賞だけど)の女性作家を続けて読んだ。多和田葉子も読みたかったけど…

マイ・ベスト・ミステリー IV

『マイ・ベスト・ミステリー』は作家が最も好きな自分の作品と他人の作品を各一編ずつとその作品に関するエッセイを収めたアンソロジー。全6冊出ててそれぞれ6人程度の作家のものが収められてる。『IV』は赤川次郎、夏樹静子、西村京太郎というかなりベタな…

放送大学に川上弘美

放送大学に川上弘美が出てた。『文学の愉しみ』というラジオの講義にゲストとして出てた。2008年の講義ってことで、『どこから行っても遠い町』の時に週刊ブックレビューで見て清楚な感じのきれいな人だなって思ったのがちょうどその年の年末だから、講義は…

短編小説あれこれ

モーパッサン「首かざり」 今までに書かれたあらゆる小説のなかで最も残酷な物語が「首かざり」である。幼き日の私はこの一篇を読み終えて殆ど作者を憎悪した。人の世の実相を見抜くこと炬(きょ)の如き眼光に敬意を払うこと吝(やぶさ)かではないし、思い…

武田知弘「織田信長のマネー革命―経済戦争としての戦国時代」

「織田信長のマネー革命」は信長の経済政策(金融だけじゃなく)について書かれている。一見、経済との関係が見えない行動についても経済の側面から書かれていて、なるほどそういう意図があったのかと思うことが(特に比叡山焼き討ちについて)あった。それ…

北アフリカ革命がらみ

日本人が知っておきたい「アフリカ53ヵ国」のすべて 「アフリカ53ヵ国」はタイムリーなんだかタイムリーじゃないんだか。国境線ももうじき変わるわけだし。南部スーダンは【独立地域】として載ってるけど。 さすがにアフリカは名前も知らない国がいくつかあ…

テオフィル・ゴーティエ『女議長への手紙』 サバチエ夫人への手紙 (1972年) Lettre à la Présidente — Wikipédiaシュレーダー・デフリエント『ドイツ歌姫の回想』 ある歌姫の想い出 (1978年) (富士見ロマン文庫) Aus den Memoiren einer Sängerin: Vollständ…

キャンディ・キャンディとモリー先生との火曜日、濃厚な人間関係

いがらしゆみこ「キャンディ・キャンディ」 「キャンディ・キャンディ」を読んだ。子供のころにアニメやってたけど本編を見た記憶がほとんどなくてテーマ曲だけ覚えてる。「笑って〜笑って〜笑ってキャンディ〜」なんていうくらいだから笑ってられない出来事…

宮崎哲弥のDVD教養主義

週刊文春連載の宮崎哲弥のDVD教養主義で「母をたずねて三千里」の原作について触れられてた。立ち読みして後でネットでチェックしようと思ってたんだけど、「母をたずねて三千里」を忘れるわけがないと思ってちゃんと記憶してなかったので、途中で「何かの戦…

薬師院仁志『日本とフランス 二つの民主主義―不平等か、不自由か』 光文社新書 2006年

政治の対立軸 『日本とフランス 二つの民主主義』によると日本の政治はアメリカ型の自由主義的な志向が強いらしい。それに対してフランス型の平等主義的な選択肢があってもいいのではないかというのがこの本の主な主張。 一通り書き出すと右派=自由主義(自…

言葉関連の本

「トラッドジャパンのこころ」を買った。NHK教育テレビ「トラッドジャパン」の「Words & Culture」のコーナーをまとめたもので、内容は言葉を通した比較文化が中心。テレビは全52回で本には50項目載ってる。発売は3月なのでテレビでやったもの以外も載ってる…

たまごと言語学

8日にNHKの「みんなでニホンGO!」という番組で、「たまご」の漢字「卵」と「玉子」をどう使い分けるかという内容のことをやっていた。肉食に対する忌避がまだあった時代に卵を食べる時に生々しさを避けるために「玉子」を使うようになったというような話だ…

シェイクスピアの史劇 王の在位年代順リスト

名前 生没年 在位 文庫 白水社 ジョン王 1167-1216 1199-1216 ち 13 リチャード二世 1367-1400 1377-1399 ち 11 ヘンリー四世 1367-1413 1399-1413 ち岩 15,16 ヘンリー五世 1387-1422 1413-1422 ち 19 ヘンリー六世 1421-1471 1422-1461、1470-1471 ち 1,2,…

齋藤孝とシェイクスピアと少女漫画

自分でも長いこと忘れてたけど、シェイクスピアと少女漫画を読むきっかけになったのが齋藤孝の「座右のゲーテ」。主にエッカーマンの「ゲーテとの対話」からゲーテの言葉を引きながら、著者の解釈やそれを応用した考え方が書かれている。 ゲーテとシェイクス…

萩尾望都

横森理香と萩尾望都 まだ一部しか読んでないけど、横森理香の「恋愛は少女マンガで教わった」に大人になりたくない少女が自らの女性性を嫌悪する、みたいなことが書いてあった(微妙に違ってるけど)。それを読んだ時は気付かなかったけど、そのことが「11人…

楊逸の読書のすすめと思想統制

シナと宗教と西洋文学 岩波書店の販促の小冊子「読書のすすめ 第13集」を本屋でもらってきた。その中の楊逸の「想像する洋書の中の洋風景」というエッセイが面白かった。 幼少時代の私が持っていた宗教へのイメージは、迷信と愚かの二言で一括することができ…

オックスフォード英語大辞典と現代オタク用語

博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話 OEDというのはオックスフォード英語大辞典(Oxford English Dictionary)のこと。英語の全ての(解説によると1150年以降の全てらしい)単語とその語源(英語以外の言語も含めて)、綴りや意味の変遷などを収録するこ…

神話と聖書と手塚治虫

神話と聖書と学問 最近読んだ本で一番面白かったのが「知の分類史―常識としての博物学」。大まかに言うと、博物学や百科事典における分類を通して人類の知(具体的に言うなら、人類が何を知っていたのか、それをどう理解していたのか)の歴史をたどる、とい…

ブックオフオンラインと音楽の本まとめ

ブックオフオンラインとピーター・バラカン ブックオフオンラインでなぜか妙に安いものがある。しかも状態も良かったり。逆にそこそこいい値段したのに状態が悪かったり(状態によってか在庫によってか値段は結構変わる)、かと思えば絶版(か重版されてない…

ニーチェと少女漫画

作者に都合のいい世界と女に都合のいい男 少女漫画の、というか少女漫画にありがちなことで、嫌いな所が二つある。一つはやたらと交通事故が多い所(書いたときはそう思ってた(というか自分の中の統計上では実際そうだった)けど、そうでもないかも)。もう…