政治の対立軸
『日本とフランス 二つの民主主義』によると日本の政治はアメリカ型の自由主義的な志向が強いらしい。それに対してフランス型の平等主義的な選択肢があってもいいのではないかというのがこの本の主な主張。
一通り書き出すと
右派=自由主義(自由民主主義)=低福祉低負担=小さな政府
左派=平等主義(社会民主主義)=高福祉高負担=大きな政府
ということになる。
アメリカのリベラル左派は宗教的な価値観に対してリベラルなのであって、『経済的自由主義を主張しているわけではない。』(p.74)
税制について
税制については別で一冊本を書いて欲しいくらいだけど、本書では『不労所得で儲けた者たちがド派手な高額消費に狂奔していたバブル時代』だった1989年の参院選などを取り上げて、『実際の富裕層の大半は勤労所得で儲けているのではないにもかかわらず』、『賃金労働者の代表たる左派政党』が消費税導入に反対したことを批判している。
消費税については逆進性の問題があるとしながらも、所得税の累進性強化よりも『カネを多く使う者ほど負担額が大きくなる』消費税の方が平等主義的とみなしているみたい。
もう一つ、金持ち対象の税制としては、『ドイツ(財産税)やフランス(富裕税)などでは、株式を持っているだけで税金が課せられる』とのこと。賛否はともかく左派政党の政策としてはまっとうだと思う。
(p.52〜55あたり)
個人主義・平等・連帯・愛国心
大雑把に言うと、フランスでは同質で平等な個人たるフランス人として連帯することが求められる。よって、個人主義と平等主義と愛国心は矛盾しない。
個人主義とは、すべての国民が個人という資格において平等なフランス国民であるという主張なのである。(p.152〜153)
『フランスでは、赤の他人同士が、一つの共和国の下で、社会(ソサエティー)の一員として連帯する精神が求められるのである。』(p.151)
左派的国家観
『フランスなどの国では、NPOや市民団体の行政参加といったやり方が、極めて反民主主義的と見なされることさえある。選挙で選ばれてもいないものの発言力や影響力が大きくなることを、非常に警戒するからである。』(p.80)
『社会主義や共産主義の理念は、すべての個人の平等を保障するための集権的国家体制の建設であって、言わば国家主義的平等主義とでも呼ぶべきもの』で、『そこでは、国家と平等が並立して重視される一方、自由は軽視されるのだ。』(p.150)
雇用の安定
『役所が職員削減に励むのを国民が喜ぶことは、民間企業のリストラに錦の御旗を与えることと同じなのだ。
つまり、一方で役所が率先して人減らしを進めることを支持しながら、他方でフリーターの増加を憂うる事は、一種の論理矛盾なのである。』(p.92)
この他に雇用形態などについて詳細に書いてある。