あの日食べたバターライスの不味さを僕達はまだ知らない。(実写版)

We still don't know the distastefulness of the butter rice we ate that day. (live-action version)

倉山満『保守の心得』

 倉山満は保守派の憲政史家。『保守の心得』は、「韓国が嫌い」という貧しい愛国心や「日本が好きだから保守」という単純な思考ではなく、大局観を持った「成熟した保守」になるためにはどうあるべきかを記したもの。第一章の『「成熟した保守」とは何か』に続いて第二章以降はそれぞれ「政党の近代化」「財政」「外交」「憲法」をテーマにしている。

拉致事件について

現実には英米の力を借りてナチスを追っ払ったのですが、単なる亡命者にすぎないド・ゴールが、「先陣だけは絶対にフランス人にやらせろ」と言い張ったことで、フランス人は自分たちの手で祖国を取り戻したという自信を得ることができたのです。(p.36)

心ある自衛官の中には「自分が死んでも意味があるならやりたい」と語る人もいます。自分の行動に意味があるなら、危険を冒してでも遂行したい。しかし、そこに意味を与えてくれる思想が今の保守論壇にはありません。おそらくどこの論壇を俯瞰しても、「日本の自衛官がどれほど死んだとしても平壌攻略戦に赴き、ド・ゴールのごとく先鋒を務めろ」などと主張する言論人は、私のほかにいないでしょう。(p.37)

大日本帝国憲法の成立と保守の態度

明治時代、西欧の人々が納得する憲法や法体系を作らなければ、世界で生きていけない、不平等条約も改正できない、日本が生き残るために、憲法を制定し、議会を開設しよう。これが安全保障上の国益を追求した行動でした。(p.42)

 文明という横軸を乗り越えつつも、歴史という縦軸から発するものを再確認する。その積み重ねによって、変わりゆく伝統の中で国家を守り、歴史を紡いでいく。
 これこそ先人たちが身をもって実践してきた保守の態度です。どこかの時代に勝手な理想像を思い描く復古でも、頑迷固陋に改革を拒否する守旧とも違うのです。(p.43)

池田勇人所得倍増計画について

当時は、労働運動と革命運動の全盛期です。日本人労働者の不満を爆発させ、政府を転覆させようとソ連が暗躍していました。そこで池田首相は「今すぐ政治活動をやめて十年も働けば、月給は二倍になるのだから、みんなで真面目に働こう」と言ったのです。つまり所得倍増計画は単なる経済政策にとどまらず、ソ連の謀略を叩き潰すための安全保障政策でもあったのです。(p.103)

 この事例に限らず経済力は国防の原資になるわけで、安全保障を経済と切り離して考えることはできない。

アメリカの非道

アメリカ占領軍は、占領地の法律を変えるという国際法では絶対にやってはいけないとされる非道を行いました。ましてや憲法をや、です。そんな行為をする国は、まともな文明国ではないとするのが、三百年かけて積み上げられてきた国際慣習法です。これは一九〇七年ハーグ陸戦法規で明文化されています。(p.178)

憲法改正について

 まず、日本国憲法を改正するという発想を捨てる。日本の歴史・伝統・文化というものを見直し、もう一度、帝国憲法がいかに成立したかを問い直す。これが出発点です。
 もっと正確に言えば、帝国憲法の条文を改正することよりも、帝国憲法がいかに日本国の歴史・文化・伝統に則り、なおかつ世界の最先端にあった憲法を追い越すという気概のもとに作られたものであったかを再確認する。そのうえで、世界の進運に合わせて、負けないものを作るにはどうすればいいのかを議論することです。(p.182)

日本人には条文を書き込めば世の中が変わると思っている人も多いのですが、憲法とは価値観を具体化した慣習である習律があって初めて機能するものなのです条文を優先させた考え方は、憲法の正しい捉え方ではありません。(p.191)

感想というかメモ

 名前も聞いたことがないような人物や名前だけは知ってるけどよく知らない人物が挙がってて、著者が高く評価してる人物で自分が特に気になったのは、迫水久常と田中菊次郎。迫水は鈴木貫太郎内閣の内閣書記官長として終戦工作を行った人物(p.120)。田中は外務省でもっともリアリズムを持っていた外交官(p.134)とのこと。
 阿部正弘については『資質的にはとても優秀』としながらも『結果的に政治を預かる当事者としての能力が足り』なかったとの評価(p.170-171)。

倉山満「“自称・保守”にいま一度、覚悟を問い直したい」 | 日刊SPA!
http://nikkan-spa.jp/587712
第7週5話これが帝国憲法だ?先進的な内容に世界が驚嘆!【CGS倉山満】
https://www.youtube.com/watch?v=b0Jzo_fIk24
倉山満の直球勝負 「保守の心得」のご紹介 ゲスト 上念司
https://www.youtube.com/watch?v=KrZXcG5c_c0