長期金利がマイナスになった。異常な低位にあるのは世界経済の不安定化によるもののようだけど、それを差し引いても国債の金利が低水準で推移しているということは、日本政府に債務を担う余力が大いにあるということを意味していて、家計から国庫への所得移転である消費税増税が必要なかったことの証だと言っても過言ではないだろう。
このところの状況を見て、金子洋一が『日本経済復活のシナリオ』で指摘した「霞が関が不景気を維持しようとしているのではないか」という疑念を思い出す。
金子洋一は民主党の参議院議員。いわゆるリフレ派で経済政策に明るいことで知られる。
「景気の良し悪しに関係なく税収が安定する」ことを理由に、消費税を中心とした税収構造にした場合、景気が悪くても税収が減らないのだったら、政府からは「景気を良くするインセンティブ」がなくなる。(p.42)
或いは霞が関はさらに冷徹な計算をしているのかもしれない。(p.43)
景気が良くなると貿易赤字になり、それによって経常赤字が続けば国内から資金が流出して国債暴落の可能性が出てくるという考えを持つ人がいる。
そして官僚は税収弾性値が常に低いと信じているので、景気が良くなっても税収が増えるとは考えない。
すると「国債の信認の維持を最優先に考えている人」にとっては「景気がいいと国債の暴落に繋がり兼ねない」のだから、「国債の暴落の可能性が増えるくらいだったら、いっそのこと景気を悪くしてしまったほうがいい」という結論に至るのかもしれないのだ。(p.43)
金子の「霞が関が不況を望んでいる」という仮説は、にわかには信じがたいものではあるけど、現実に起こっている事態と合致しているように思う。消費税は景気を悪く保ちつつ税収を増やすという要件を完全に満たしている。
改めて、日本最高レベルのエリート集団であるはずの財務官僚がなぜこうも愚かなのかと疑問に思う。この期に及んでまだ国債の信認とやらをさらに高めるために消費税再増税を強行するつもりなんだろうか?
↓主要税目の税収の推移。消費税がいかに安定しているかが分かる。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/011.htm