朝日新聞の社説とNHKの時論公論が同じような国民を馬鹿にした態度を取っている。
不人気な政策の先送りを問うことで自らの公約違反にお墨付きを得ようとする。これは、国民感情を逆手にとった有権者への責任転嫁でもある。
消費増税の先送りは、与党だけでなく、野党も求めた、いわば政治の総意の形です。その背景には、増税の負担を嫌がる国民の声があるのも事実です。
私たち国民も、将来世代に対する責任をどうしたら果たせるのか、改めて考える必要があるのではないでしょうか。
「将来への不安増す 消費増税先送り」(時論公論) | 時論公論 | 解説アーカイブス | NHK 解説委員室
景気が悪くなれば失業率も上がるし自殺者も増える。人の命がかかった増税を国民が拒否するのは妥当な判断だと言っていいだろう。それをどうやら大マスコミの論説委員や解説委員は、国民が負担は嫌だという言わばわがままな感情で反対していると認識しているらしい。
最後の引用部分は『私たち国民も』とあるけど、語り手である「私」は『将来世代に対する責任をどうしたら果たせるのか、改めて考える』までもなくすでに考えている人であり、「私たち国民」と言いながら「私」はそこに含まれていない。よってこれは「あなたたち国民」と読み替えるのが妥当であろう。つまり、「あなたたち国民」も私の立っている高みについてきなさいと、無知蒙昧な庶民を教導しているわけだ。もちろんついていったら上記のようなディストピアが待ち受けているわけだが。
元朝日新聞記者の烏賀陽弘道(うがやひろみち)氏が、全国紙の社員が統治機構と同じ母集団から出ていて、平均的な市民より統治機構の側に近いと指摘している(http://twilog.org/sonnysharrock/search?word=hirougaya&ao=a&order=allasc)。毀誉褒貶の激しい方のようだけどこの指摘は妥当であるように思う。
大マスコミの社員・職員は、はなから庶民とはかけ離れた感覚を持っている上に、優秀な自らと同じ母集団から排出輩出した統治機構のエリート官僚が間違いを犯すはずがないという意識が重なって、人命軽視とも言えるとんでもない主張に唯々諾々と同調しているのではないだろうか。
消費税をめぐる問題は庶民対支配階級(官僚、大マスコミ)という側面があるようにすら思える(この点を強調する気はないけどそう考えると経営者団体が消費税に賛成していることとも辻褄が合う)。
政治家はと言うと、個々の考えはいろいろあるようだけど、民進党を中心とした野党連合、自公連立政権、与党寄りの野党と、すべての政治勢力が増税延期の方針で、少なくとも消費税に関しては官僚や大マスコミよりは国民に近い位置にいると言える。国民は当然、国民の側に立つ政治家を支えるべきだろう。
ついでに書くと財政再建が喫緊の課題であるか否かは金利を見ろで終わる話。
現状は財政再建どころか市場に国債が不足している状態であり、消費税の増税によって政府が民間の資金を過剰に吸い上げた上、支出を絞りすぎている緊縮財政が問題。つまり財務省や大マスコミの主張とは正反対の問題である。
政府債務の問題は絶対額ではなく対GDP比で見る必要がある。また税収を増やすという意味でもGDPを拡大させることは重要である。日本の財政の問題はGDPの拡大=名目成長率の上昇を目指して来なかったことによるものであり、財政健全化とは名目経済成長率を上げることだと言ってもいいのではないだろうか。そう考えると、経済成長を阻害してでも増税を目指す勢力は財政をも軽視しているということになる。
つまり増税派は、増税が目的化して思考が凝り固まった人たちで、財政の観点からも、将来のためにより豊かな国にしなければならないという観点からも、『将来世代に対する責任』を最も果たせない人たちと言ってもいいのではないだろうか。
漫画『北斗の拳』に次のようなシーンがある。
山賊のような輩(自分はヒャッハー軍団と呼んでいる)が男から種もみを奪おうとする。男は「この種モミが実を結べばあんたらにもわけてやろう それまでまってくれ!!」と懇願するが、ヒャッハー軍団は「なおさらその種モミを食いたくなったぜ」と言って男に迫る。
「実を結べばあんたらにもわけてやろう」というのは経済政策に例えるなら景気を良くしたうえで増税するという発想に近いだろう。実際の経済は増税をしなくても経済成長によって税収を増やすことができるし、増税によって景気が悪化すればかえって税収が減る可能性すらある。景気の回復を待たずに増税を急ぐ財務省は種もみを奪おうとするヒャッハー軍団と全く同じ発想をしているのだ。