ここで「ハードバップ」という用語について少々説明しておこう。世間では〝ハード〟ということばにひきずられて、 「ビ・バップをより熱狂的にしたもの」なんてことを言う人がいるが、実際にビ・バップの代表的な演奏を聴き、そしてそれがハードバップへと変化していく過程を聴けば、事態はむしろ逆だということに気がつくだろう。
たとえばあまり知られていないマイルスの典型的ビ・バップ作品『パリ・フェスティバル・インターナショナル』を聴いてみよう。パーカーの下を離れたマイルスが、俺こそが主役だとばかりにいつになくアグレッシブに吹きまくるが、熱狂とはまさにこうした演奏のためにあることばだ。このアルバムと『リラクシン』を聴き比べれば、ハードバップとは洗練されたビ・バップであるということが誰にでも納得されるだろう。
後藤雅洋『ジャズの名演・名盤』(講談社現代新書、1990年)p.101~102
エレクトリック・マイルスの話題はなんと言っても一九六九年録音『ビッチェス・ブリュー』に集約される感があるが、当時のジャズ喫茶での実感で言えば、むしろ衝撃度はこの『マイルス・イン・ザ・スカイ』のほうが大きかった。
ギターははるか昔から電気増幅が行われていたが、マイルス・バンドのような超メジャー・グループがエレクトリック・ピアノを採用したということが異常な関心を呼んだのだった。
後藤雅洋『ジャズ喫茶四谷「いーぐる」の100枚』(集英社新書、2007年)p.86
以前に読んだのを思い出したけど出典や正確な内容が思い出せなかったことをメモしておいた。
ジャズ喫茶 四谷「いーぐる」の100枚 (集英社新書 421F)
- 作者: 後藤雅洋
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/12/14
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